診療科
放射線治療科
診療の概要
放射線療法は「手術療法」、「化学(薬物)療法」と並ぶ「がん三大療法」の1つです。手術療法と同様に根治を目的とした局所療法ですが、病巣部に放射線を照射することによりがん細胞を死滅させ、周囲臓器の機能、形態を温存できる利点があります。また、がんを治癒するための根治治療としてだけでなく、神経症状や痛みの軽減を目的とした緩和治療としてまで幅広く活用できます。放射線療法は放射線単独で行う場合もありますが、現在は複数の治療法を組み合わせた「集学的治療」が主流となっています。
診療の特徴
当院は2013年8月より東北大学病院放射線治療科の全面的な協力の下、医療用直線加速装置(リニアック)を使用した外部放射線治療を行っています。治療は通常1日1回、疾患および症状に応じて10日から40日程度です。1回の照射時間は数分程度ですが、照射部位の位置決め、確認を含めると15分程度の治療時間となります。照射中に患者さんが痛みや熱などを感じることはありませんのでご安心ください。
放射線治療の進め方
1.診察

毎週金曜日に東北大学病院放射線治療科の医師が治療方針決定のための診察を行います(照射開始後は毎週水曜日に診察があります)。また臨床的に緊急性を要する患者さんは水曜日にも対応します。患者さんならびにご家族に治療目的、期待される効果、治療方法、副作用などについて詳細に説明させて頂きます
2.固定具の作成および決定


照射部位の位置精度を担保するために、体位の保持を目的とした固定具を決定します。固定具は治療する部位により異なりますが、体動が大きな部位(頭部等)には、患者さん専用の固定具を作成します。
3.治療計画用CT撮影

放射線治療計画を作成するためにX線CT撮影を行います。先に決定または作成した固定具を使用し、実際に治療を行う体位にて撮影します。造影剤を使用する場合には直前の食事を控えて頂きます。その他、撮影前に協力いただくことがある場合には前日までにご連絡差し上げます。撮影直後、体にマジックでマーキングを行います。照射開始日まで消さないよう注意してください。
4.オリエンテーション

1)安心して予定の放射線治療を休まずに最後まで受けられること、2)副作用を予防し、また悪化させないこと、3)患者さんの苦痛および不安が軽減されることを目的とし、DVDやパンフレットを使って、具体的な日常生活における注意点やおひとりおひとりに合った必要なケアについて初診日より数回に分けて担当看護師が説明とケアを行います。説明終了後、実際の治療室、治療装置をご案内し、受付時に必要な本人確認のための指静脈認証登録を行います。
5.治療計画

放射線治療医が最新の3次元治療計画装置を用い、撮影した計画用CT画像をもとにMRI画像などを参考に、治療効果を最大限に高め、同時に周辺の正常組織の副作用を極力抑制することを目的とした治療計画を作成します。
6.治療計画検証


作成された計画を安全かつ正確に運用するため、放射線治療専門スタッフが専用のソフトまたは機器を使用し治療計画の検証を行います。
7.照射
検証された治療計画を放射線治療情報管理システムにおいて管理・運用し照射を行います。照射位置照合装置(On Board Imager)にてX線撮影、またはCBCT(コーンビームCT)撮影を行い、照射位置の微調整を行うことによって高い位置精度を担保した照射を可能としています。初回治療時には新たにマーキングを行いますので照射終了日まで消さないように注意してください。万が一気分が優れない場合には動かずに声を出してお知らせください。治療室内には患者さんの状況を確認するためのカメラとマイクが設置されており、緊急時には瞬時にスタッフが対応します。
※経過観察


照射期間中は週に一度放射線治療医による診察を受けて頂きます。また看護師、放射線技師が毎日患者さんの状態をお伺いし記録いたします。経過観察記録は診察時に医師が確認します。体調の変化等がありましたらお知らせください。
※経過観察
放射線治療は副作用を伴う場合があります。皮膚炎や粘膜炎、倦怠感など照射期間中に発症する急性期障害は照射終了後数週間の間に回復もしくは軽減します。照射終了後半年から数年経過してから発症する晩期障害は難治性であり十分な注意が必要ですが、障害の発現をできるだけ抑制するために正確な治療計画と照射を行っています。照射部位に応じて症状や発生頻度が異なるため、初診時に治療医、看護師から詳しい説明があります。
※治療中、治療後のケア
放射線治療中は普段どおりに生活していただいて構いませんが以下のことを心がけるようにしてください。
- 十分な休息や睡眠をとるようにしてください。
- くしゃみ、咳が出ると照射部位が定まらないため風邪をひかないようにしてください。
- バランスのとれた栄養のある食事をとってください。照射部位によっては、刺激物等が制限される場合があります。
- 入浴は皮膚に刺激をあたえない様に熱めのお湯や温泉は控えてください。また体のマークが消えないように十分に注意してください。
- 治療終了後も放射線による効果、副作用の観察が必要ですので、定期的に医師の診察を受けてください。
照射部位や治療方針により放射線による副作用が異なりますので診察時に詳細な説明をいたしますが、不明なことや不安なことがあれば遠慮なくスタッフにご相談ください。
設備
放射線治療装置 Clinac iX (VARIAN medical systems)


Cinac iX(クリナック アイエックス)は世界で4,000台以上の納入実績を持つ高い性能と信頼性を提供する装置です。IGRT(画像誘導放射線治療)およびSRT(定位放射線治療)、IMRT(強度変調放射線治療)、VMAT(回転強度変調放射線治療)に対応可能であり高精度な治療を提供できるシステム構成となっています。
三次元放射線治療計画装置 Eclipse Ver.11 (VARIAN medical systems)


Eclipse(イクリプス)は通常照射の他、3次元原体、IMRT、VMATなど最新の高精度放射線治療まで、患者さん毎に最適な治療計画の作成、選択、照合を可能とした包括的な治療計画システムです。当院では最新の計算アルゴリズムを搭載しており、安全で高精度な治療計画を実現します。
放射線治療計画CT装置 Optima580W (GE Healthcare)


Optima580W(オプティマ580)はさまざまな治療体位に対応するため80cmの大開口径、専用寝台および800mAの高出力X線管球を採用した16列マルチスライスX線CTシステムです。VARIAN RPM(アール ピー エム)システムを使用し、呼吸性移動を考慮した4DCT撮影も可能です。
独立型ワークステーション AdvantageSIM2 (GE Healthcare)


AdvantageSIM2(アドバンテージ シム2)は4DCTにより撮影されたCT画像の処理および各臓器の輪郭抽出を行うことを可能としたワークステーションです。処理されたデータはDICOMRT規格により治療計画装置へ転送され計画作成に使用されます。
放射線治療情報システム KRatis (KOSEKI)


KRatis(クラティス)は照射情報、治療スケジュール、会計、統計等の統合管理を行うシステムです。当院ではシステムのカスタマイズにより、タッチパネルによる受付、患者さんの本人照合(指静脈認証)、タブレットPCを利用した経過観察記録、業務フローナビゲーションおよびチェック機能等を構築し、より安全な放射線治療を提供する体制を確立しています。
放射線治療の概要(データの流れ)
診療実績
放射線治療件数
原発部位 / 年度 | 治療計画人数(新規) | 治療計画人数(延べ) | ||||
---|---|---|---|---|---|---|
2019 | 2020 | 2021 | 2019 | 2020 | 2021 | |
脳・脊髄腫瘍 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 |
頭頸部腫瘍 | 1 | 1 | 0 | 1 | 1 | 0 |
食道癌 | 3 | 5 | 4 | 4 | 10 | 6 |
肺癌、気管・縦隔腫瘍 | 21 | 18 | 25 | 27 | 26 | 41 |
乳癌 | 24 | 43 | 28 | 40 | 73 | 45 |
肝・胆・膵癌 | 8 | 5 | 7 | 11 | 5 | 7 |
胃・小腸・結腸・直腸癌 | 11 | 13 | 15 | 12 | 15 | 19 |
婦人科腫瘍 | 0 | 0 | 1 | 0 | 0 | 1 |
泌尿器系腫瘍 | 12 | 27 | 31 | 19 | 46 | 44 |
造血器リンパ系 | 1 | 1 | 0 | 1 | 1 | 0 |
皮膚・骨・軟部腫瘍 | 3 | 1 | 3 | 3 | 2 | 3 |
その他(悪性腫瘍) | 2 | 1 | 2 | 3 | 4 | 5 |
良性腫瘍 | 3 | 0 | 0 | 4 | 0 | 0 |
合計 | 89 | 115 | 116 | 125 | 183 | 171 |
ドクター紹介
医師名 | 認定医/専門医等 |
---|---|
科長 武田 一也 |
日本放射線腫瘍学会・日本医学放射線学会認定放射線治療専門医 第1種放射線取扱主任者 青森県緩和ケア研修会受講済 |
認定資格
放射線治療専門放射線技師 1名
放射線治療品質管理士 1名
発表等
学会・研究会発表
- 渡邉暁、坂野隆明、金澤義、中村大介、佐藤静、佐藤州彦
- 業務フローナビゲーション機能を活用した放射線治療情報システムの運用
[第70回日本放射線技術学会総合学術大会(横浜)2014.4.10] - 渡邉暁、金澤義、中村大介、佐藤静、佐藤州彦
- 多目的用途を備えたWinston-Lutzテスト用治具の作成
[第42回日本放射線技術学会秋季学術大会(札幌)2014.10.11]
放射線治療科 過去の業績
2013(平成25)年度
- 渡邉 暁、坂野 隆明、中村 大介、佐藤 州彦
- 生体情報認証機能を活用した放射線治療情報システムの運用
[第41回日本放射線技術学会秋季学術大会 2013.10(アクロス福岡)] - 渡邉 暁、坂野 隆明、金澤 義、中村 大介、佐藤 静、佐藤 州彦
- ヒューマンエラーの排除機能を強化した放射線治療情報システムの運用
[第三回東北放射線医療技術学術大会 2013.11(コラッセふくしま)] - 金澤 義、渡邉 暁、中村 大介、佐藤 静、佐藤 州彦
- 当院における放射線治療の現状
[平成25年度宮城県放射線技師会 第四支部勉強会 2013.12(みやぎ県南中核病院 講堂)]